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お寺の借地を相続したら?売却・放棄・更新の選択肢

お寺の借地を相続すると、「このまま持ち続けるべきか」「売却して現金化すべきか」「返還してしまうか」といった判断に迫られます。
借地は資産である一方、地代や更新料、承諾料などの負担も伴うため、相続後の対応を誤ると大きな出費や相続トラブルにつながりかねません。
選択肢は大きく「売却・放棄・更新」の3つに分かれ、それぞれにメリットとデメリットがあります。
本記事では、お寺の借地を相続したときに確認すべきことから、3つの選択肢の特徴、判断基準、専門家に相談すべきケースまでを詳しく解説し、最適な決断をするための指針を提供します。
記事監修者情報

株式会社グランクルー 代表取締役 加瀬 健史(カセ タケシ)
不動産業界歴20年以上・宅地建物取引士
不動産のプロでも敬遠しがちな借地権取引の実績100件以上。借地権の売買や更新料の相談・借地トラブルまで幅広く対応し借地取引に多くの知見を持つ。世田谷の借地権に特化したメディア「教えて世田谷不動産」運営。
お寺の借地を相続したらまず確認すべきこと
お寺の借地を相続した場合、すぐに「売却」「放棄」「更新」を決めるのではなく、まず現状を正確に把握することが重要です。
契約条件や借地権の価値を調べておかないと、不要な費用を負担したり、本来得られる利益を逃す可能性があります。ここでは最初に確認すべきポイントを整理します。
契約内容(更新期限・承諾条項)の確認
借地契約書には、更新期限や承諾に関する条項が明記されています。
更新時期が迫っている場合、更新料や地代の改定が発生する可能性があるため要注意です。
また、売却や転貸にあたって寺院の承諾が必要かどうか、承諾料が発生するのかを契約書で確認しておくことも欠かせません。
借地権の評価額・市場価値の把握
借地権は市場で売買できる資産です。相続した借地にどれくらいの価値があるのかを把握するために、不動産会社や不動産鑑定士に査定を依頼するのが有効です。
更地価格に借地権割合を掛けて概算の借地権価格を算出できるため、売却の可否を検討する基準になります。
相続税の対象になるかどうか
借地権は相続財産として評価され、相続税の課税対象になります。
特に都市部や人気エリアの借地は高額に評価されることが多く、現金で納税資金を用意しなければならない場合もあります。
相続税の試算を早めに行い、納税計画を立てておくことが重要です。
選択肢① 借地を売却する場合
お寺の借地を相続した際、最も資産価値を活かせる方法が「売却」です。
借地権は市場で売買が可能な資産であり、相続人が利用しない場合でも、現金化することで相続財産の分割や資金計画に役立ちます。
ただし、寺院が地主である以上、売却には独特の手続きと費用が伴います。
寺院の承諾と承諾料が必要
借地権を第三者に売却するには、地主である寺院の承諾が不可欠です。
その際に支払う「承諾料(譲渡承諾料)」は、借地権価格の5〜10%が相場とされます。承諾料は数十万〜数百万円単位になることが多く、売却時の大きなコストとなる点を理解しておく必要があります。
仲介手数料や税金などの費用
不動産会社に仲介を依頼すれば、売却代金の約3%+6万円(上限)が仲介手数料としてかかります。
さらに、司法書士報酬、売買契約書に貼る印紙税、そして譲渡所得税や住民税といった税金も発生します。
売却益が出る場合、税率は所有期間によって20%または39%となるため、手取り額の試算は必須です。
相続財産の分割を容易にできるメリット
借地を売却して現金化すれば、相続人同士で分割しやすくなります。
不動産という形のまま残すと「誰が使うのか」「どう維持するのか」でトラブルになりやすいですが、現金にすれば公平に分けられるため相続争いを防ぐ効果があります。
老後資金や教育資金など、用途に合わせて自由に使える点も大きなメリットです。
選択肢② 借地を放棄する場合
お寺の借地を相続しても利用予定がなく、維持コストばかりが負担になる場合には「放棄」という選択肢もあります。
資産価値は失うものの、継続的な支出から解放される点が最大のメリットです。
ただし、放棄には一定の手続きや費用が伴うため注意が必要です。
建物解体・更地返還が原則
借地を返す際には、更地にして地主に返還するのが原則です。
建物が残っている場合は取り壊しが必要で、木造住宅なら100〜200万円、鉄骨造やRC造なら数百万円かかることもあります。
この解体費用は相続人の大きな負担となるため、事前に見積もりを確認しておきましょう。
地代や維持費の負担から解放される
放棄すれば、毎月の地代や固定資産税相当分の負担、建物の修繕費といった維持コストが一切なくなります。
利用予定がないのに地代を払い続けるのは無駄であり、相続人にとって将来的な負担を減らせるのが大きな利点です。
放棄時の注意点(合意書作成・滞納清算など)
借地を放棄する際には、寺院と「返還合意書」を作成し、条件を明確にしておく必要があります。
特に、未払いの地代や修繕費用がある場合は清算してから返還しなければなりません。
書面化を怠ると、後日「約束が違う」とトラブルになるリスクがあるため注意が必要です。
選択肢③ 借地を更新する場合
相続した借地を自分や家族で引き続き利用する予定があるなら、「更新」という選択肢が現実的です。
借地契約は借地借家法によって強く保護されており、原則として更新が可能です。
ただし、更新には費用や条件が伴うため、メリットとリスクをしっかり理解しておく必要があります。
地代や更新料が発生する
借地を更新する場合、毎月の地代は当然として、契約更新時には「更新料」が求められることがあります。
更新料は法律で定められたものではなく、地域慣習や地主である寺院の方針によって異なりますが、概ね地代の数か月分から年額の1〜2割程度が相場とされています。
将来の相続人に引き継がせる場合の利点
更新を行えば、借地権を維持したまま次世代に引き継ぐことが可能です。居住用として活用し続けたり、将来的に売却することもできます。
資産として残す意義がある場合や、家族がその土地を使い続ける意向がある場合には更新が有効です。
利用予定がなければ負担だけ残るリスク
一方で、住む予定がないのに更新を続けると、地代や更新料といった負担だけが残ります。
さらに建物の老朽化や修繕費の問題もあり、資産どころか負債になる可能性もあります。
利用の見込みがない場合は、更新ではなく売却や放棄を検討した方が合理的です。
お寺の借地を相続したら?売却・放棄・更新の判断の基準となるポイント
お寺の借地を相続した後、「売却」「放棄」「更新」のどれを選ぶかは状況によって異なります。
感情や慣習だけで決めてしまうと、後から後悔することになりかねません。ここでは判断の参考となる主な基準を整理します。
相続人が住む予定があるかどうか
相続人やその家族が実際に借地を利用する予定があるなら、更新して権利を維持するのが妥当です。
逆に誰も住む予定がなく空き家になる場合は、維持コストだけがかかるため、売却や放棄を選ぶ方が合理的です。
借地権価格と解体費・承諾料などの比較
売却する場合には寺院への承諾料や仲介手数料、税金などが発生します。放棄の場合には建物解体費が必要です。
これらの費用を差し引いても借地権の価値が高ければ売却が有利になりますが、逆に解体費や承諾料が負担となり手取りがほとんど残らない場合には、返還(放棄)を検討する方が現実的です。
将来の資産活用と負担のバランス
借地を更新して維持すれば、将来再度売却できる可能性があります。
ただし、その間は地代や更新料の支払い義務が続きます。
資産として残す価値があるのか、それとも負担の方が大きいのかを見極めることが重要です。
専門家に相談すべきケース
お寺の借地を相続した際、自己判断だけで「売却・放棄・更新」を決めるのはリスクがあります。
特に税金や契約条件、相続人間の意見調整など複雑な要素が絡む場合には、専門家に相談することでトラブルを回避しやすくなります。
ここでは、相談が有効な典型的なケースを紹介します。
相続税の評価や申告が必要なとき
借地権は相続財産として評価されるため、一定額以上の遺産がある場合には相続税の課税対象となります。
評価額は立地や借地権割合によって大きく変わるため、税理士に相談して正確に試算してもらうのが安心です。
誤った評価で申告すると追徴課税を受けるリスクがあります。
相続人間で意見が分かれている場合
「売却して現金化したい」「更新して残したい」と相続人の意見が割れることは珍しくありません。
このような場合には、弁護士に相談して法的に公平な解決策を検討することが必要です。
場合によっては調停を活用することで合意形成を図ることもあります。
寺院との交渉が難航している場合
借地の売却や更新には寺院の承諾が必要であり、承諾料や寄付金をめぐって条件交渉がこじれるケースもあります。
不動産会社や司法書士、弁護士といった専門家を介入させることで、相場に沿った条件に近づけやすくなります。
特に弁護士は、承諾が得られない場合に「借地非訟」という法的手段をとる際にも頼りになります。

当社では寺院の借地売却の実績が豊富にあり、弁護士との士業連携もしっかりしておりますので、お悩みのことがありましたら気軽にご相談ください。ワンストップで対応いたします!(相談はこちらから)
まとめ|相続後は「資産価値」と「将来負担」を見極めて最適な選択を
お寺の借地を相続したとき、選べる道は「売却」「放棄」「更新」の3つです。それぞれにメリットとデメリットがあり、相続人のライフプランや借地の価値、寺院との関係性によって最適解は異なります。
売却は承諾料や税金といったコストはかかりますが、資産を現金化できる点が大きな魅力です。
放棄は資産を失う代わりに、地代や更新料といった負担から解放される現実的な選択肢です。更新は利用予定がある場合や将来相続人に残したい場合に有効ですが、利用予定がなければ費用だけが残るリスクとなります。
判断にあたっては、まず契約内容や借地権の市場価値、相続税の影響を確認し、数字と将来の計画をもとに比較することが重要です。
また、税理士や弁護士、不動産会社といった専門家の助言を得ることで、トラブルを避けつつ有利に選択を進められます。
要するに、相続後は「費用だけでなく資産価値と将来負担のバランス」を見極めることが成功の鍵です。冷静に選択肢を整理し、家族や相続人にとって最も合理的な道を選ぶことが、安心できる相続対策につながります。
私が責任をもって対応いたします。
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加瀬 健史(カセ タケシ)
不動産業界歴20年以上 ・ 宅地建物取引士
不動産のプロでも敬遠しがちな借地権取引の実績100件以上。
借地権の売買や更新料の相談・借地トラブルまで幅広く対応し借地取引に多くの知見を持つ。
- 世田谷の借地権に特化したメディア「教えて世田谷不動産」運営。
- ”借地取引をわかりやすく”をテーマに掲げた「借地権のミカタ」監修。
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