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境内地や墓地に隣接するお寺借地の売却は可能?特殊ケースの対処法

お寺の境内地や墓地に隣接する借地を相続したり所有していると、「この土地は売却できるのだろうか」と悩む方は多いのではないでしょうか。

一般的な借地権の売却と比べ、宗教法人独自の承諾手続きや寄付金の要請、墓地が隣接することによる買主の心理的ハードルなど、通常以上に難しさが伴います。

しかし、不可能ではありません。

契約内容や権利関係を整理し、寺院との交渉を適切に行えば売却を成立させることは十分可能です。

本記事では、境内地や墓地に隣接する借地を売却する際に直面する制約と、その対処法、必要な準備についてわかりやすく解説します。

記事監修者情報

株式会社グランクルー 代表取締役 加瀬 健史カセ タケシ)
不動産業界歴20年以上・宅地建物取引士

不動産のプロでも敬遠しがちな借地権取引の実績100件以上。借地権の売買や更新料の相談・借地トラブルまで幅広く対応し借地取引に多くの知見を持つ。世田谷の借地権に特化したメディア「教えて世田谷不動産」運営。

境内地や墓地に隣接するお寺借地の売却が難しくなる理由

境内地や墓地に隣接するお寺の借地は、法律上は売却可能であっても、実際の取引ではハードルが高いケースが多く見られます。

その理由は、宗教法人特有のルールや買主側の心理的要因、そして契約条件の複雑さにあります。

境内地に隣接する場合の宗教法人独自ルール

寺院が所有する土地は宗教法人名義で管理されており、借地の譲渡については責任役員会などの内部決議が必要となる場合があります。

一般の地主に比べて意思決定に時間がかかり、承諾が得られるまで数か月単位の調整が必要になることも少なくありません。

また、境内に隣接する土地は宗教活動や檀家との関係にも影響するため、寺院が特に慎重になる傾向があります。

墓地隣接による買主心理的ハードル

墓地に隣接する借地は、どうしても心理的な抵抗を持たれるケースが多いです。

居住用として購入を検討する人にとっては「日常的に墓地が見える」「来客に説明が必要」といった点がネガティブに作用し、需要を大きく減らす要因となります。

結果として、売却価格が下がる、または買主がなかなか見つからないといった問題につながります。

地代や承諾料の特別条件が設定されるケース

境内や墓地に隣接する借地では、通常の借地と比べて承諾条件が厳しくなることがあります。

たとえば、譲渡時の承諾料が高額に設定される、寄付金を求められるといったケースです。

また、売却後に買主が入居する際、寺院が地代の増額を条件にする場合もあります。

こうした追加的なコストは買主にとって負担となり、取引を難航させる原因となります。

建築・用途に制限がかかる可能性

宗教法人は境内や墓地周辺の環境を維持するため、用途制限を設ける場合があります。

たとえば、「居住用のみ」「事業用不可」といった制限です。買主にとって自由度が下がるため、利用目的と合致しないと購入を断念するケースもあります。

これにより需要がさらに限定され、売却までの時間が長期化する傾向があります。

境内地や墓地に隣接するお寺借地の売却の可否を判断するチェックポイント

境内地や墓地に隣接するお寺の借地を売却できるかどうかは、契約内容や権利関係の明確さ、立地条件などを総合的に確認する必要があります。特に特殊な立地であるため、通常以上に慎重なチェックが求められます。

以下に、売却の可否を判断するための主要なポイントを整理しました。

借地契約書の内容(用途制限・承諾条項)

まず確認すべきは借地契約書です。居住用以外での利用が禁止されていないか、譲渡や転貸に地主(寺院)の承諾が必須と記載されていないかをチェックします。

契約書に「譲渡には承諾が必要」と明記されていれば、寺院との交渉は避けられません。

また、用途制限がある場合、買主候補の用途と契約条件が合致しなければ売却は難しくなります。

借地権の種類と残存期間

借地権には普通借地権と定期借地権があり、性質が異なります。普通借地権は更新が可能で比較的売却しやすい一方、定期借地権は契約満了で土地を返還するため、買主の利用期間が限られ、売却の難易度が高まります。

さらに、契約の残存期間が短ければ短いほど需要は減り、価格も下落する傾向があります。

登記の有無と権利関係の明確さ

建物や借地権がきちんと登記されているかどうかも重要です。

未登記の建物や契約関係が不明確な借地では、買主がリスクを避けるため購入を敬遠します。権利関係が明確であることは、売却の前提条件といえます。

もし登記が未整備であれば、司法書士に依頼して早めに整える必要があります。

境界・接道条件の確認

境界があいまいな土地や、接道義務を満たさない土地は、建て替えや再建築ができない可能性があり、買主にとって魅力が大きく減ります。

特に墓地隣接のケースでは、境界を巡るトラブルが起きやすいため、測量図や境界確認書を用意しておくことが望ましいです。

境内地や墓地に隣接するお寺借地の売却:特殊ケースごとの対処法

境内地や墓地に隣接する借地は、一般の借地に比べて売却が難しくなる傾向があります。

しかし、適切な対処法を知っておけば売却の可能性を高めることは十分可能です。ここでは代表的なケースごとの対応策を紹介します。

境内地隣接のケース|寺院との信頼関係構築と交渉術

境内に隣接する借地は、寺院にとっても宗教活動や檀家との関係に影響するため、譲渡承諾に慎重になることが多いです。

この場合は、売却を検討していることを早めに伝え、用途や買主の属性について寺院の意向を尊重しながら交渉を進めることが重要です。

承諾料や寄付金の要望が出る場合もあるため、条件を文書化し、トラブルを未然に防ぎましょう。

墓地隣接のケース|心理的要因を補う販売戦略

墓地に隣接している借地は「心理的瑕疵物件」とみなされやすく、居住用としての需要は低下します。

そのため、販売戦略としては心理的要因を補う工夫が必要です。例えば、投資家や事業用利用を検討する買主にターゲットを絞る、価格を相場よりも抑えて募集する、周辺環境の利便性を強調するなどの方法が有効です。

地主が承諾しない場合|借地非訟による譲渡許可申立

寺院が譲渡承諾を拒否した場合でも、借地人が売却を完全に諦める必要はありません。

借地借家法に基づき「借地非訟」という制度を利用し、裁判所に譲渡許可を申し立てることが可能です。

裁判所が承諾を認めれば売却を進められますが、時間や費用がかかるため、できる限り交渉で解決するのが現実的です。

底地と一括売却する選択肢

寺院が底地を手放す意思を持っている場合には、借地権と底地を一体で売却することも可能です。

この方法なら買主は完全所有権を取得できるため需要が高まり、通常より高値での売却が期待できます。

ただし、宗教法人が底地を処分するには内部手続きや規則に基づいた決議が必要であり、実現には時間がかかる可能性があります。

境内地や墓地に隣接するお寺借地の売却を成功させるための実務ポイント

境内地や墓地に隣接する借地は、制約や心理的要因があるため通常より売却が難しくなります。

しかし、適切な戦略と準備を行えば、条件の悪さを補いながら成約につなげることは十分可能です。

ここでは、売却を成功させるために押さえておきたい実務的なポイントを解説します。

借地権に強い専門仲介を選ぶ

借地権の売却は一般的な不動産仲介と比べて知識や経験が求められます。特にお寺が地主となるケースでは、宗教法人独自の承諾手続きや交渉が発生するため、借地権取引に強い仲介会社を選ぶことが必須です。実績のある会社であれば、承諾料の相場や交渉ノウハウを持っているため、売主にとって有利な条件を引き出せる可能性が高まります。

承諾料・寄付金の有無と相場を確認

寺院によっては譲渡承諾料や名義書換料に加え、寄付金を求めるケースもあります。これらは売主にとって大きなコストとなるため、早い段階で確認して資金計画に組み込んでおくことが重要です。あいまいなまま話を進めると、決済直前に予想外の出費が発生するリスクがあります。

買主ターゲットの見極め(投資家・事業者など)

墓地隣接など心理的要因で居住用としての需要が弱い場合は、発想を切り替えて投資家や事業用利用を想定した買主をターゲットにするのが有効です。例えば、倉庫や事務所としての利用、または投資目的での購入など、ニーズに合わせた提案を行うことで需要を引き出せます。

契約書に盛り込むべき特約(承諾未了時解除など)

境内地や墓地隣接の借地は承諾が得られるまで不透明な要素が多いため、売買契約書に特約を設けてリスクを軽減することが必要です。代表的な特約としては「譲渡承諾が得られなかった場合は契約を白紙解除する」「現況有姿での引渡しとする」などがあります。これにより、承諾が得られなかった場合のトラブルや責任追及を防ぐことができます。

加瀬 健史

当社では寺院の借地売却の実績が豊富にあり、弁護士との士業連携もしっかりしておりますので、お悩みのことがありましたら気軽にご相談ください。ワンストップで対応いたします!(相談はこちらから

まとめ|特殊な借地でも売却は可能、事前準備と交渉がカギ

境内地や墓地に隣接する借地は、通常の借地権売却に比べて制約や心理的ハードルが多く存在します。寺院独自の承諾手続きや寄付金の要請、買主側の心理的抵抗などが重なり、売却の難易度は確かに高くなります。

しかし、借地契約や登記といった基本的な権利関係を整理し、寺院と信頼関係を築いたうえで交渉を進めれば、売却を実現することは十分可能です。承諾料や条件の有無を早めに確認し、買主ターゲットを居住用に限定せず投資家や事業用需要まで広げることで、成約のチャンスは大きく広がります。

また、借地非訟による譲渡許可申立や底地との一括売却といった選択肢も視野に入れれば、万が一寺院から承諾が得られない場合にも対応できます。さらに、承諾書や内部決議資料といった必要書類を早めに揃えておくことが、売却全体のスケジュールを短縮する鍵になります。

要するに、境内地や墓地に隣接する特殊な借地でも「事前準備」「正しい知識」「専門家のサポート」を組み合わせれば売却は可能です。慎重な対応と適切な戦略があれば、難易度の高いケースでも納得のいく結果に結びつけることができるでしょう。

私が責任をもって対応いたします。

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加瀬 健史カセ タケシ)
不動産業界歴20年以上 宅地建物取引士

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  • ”借地取引をわかりやすく”をテーマに掲げた「借地権のミカタ」監修。

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