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お寺借地の売却承諾料はいくら?相場と計算方法をわかりやすく解説

お寺が地主となっている借地を売却しようとすると、避けて通れないのが「売却承諾料(譲渡承諾料)」です。
これは借地権を第三者に譲渡する際、地主である寺院に支払う費用で、相場を知らないまま交渉すると不利な条件で合意してしまうリスクがあります。
一般的な目安は借地権価格の5〜10%ですが、立地や契約内容、寺院の方針によって金額は大きく変動します。
本記事では、お寺借地の売却承諾料の相場と計算方法、金額が高くなるケースや交渉ポイントまでをわかりやすく解説し、安心して取引を進めるための判断基準を提供します。
記事監修者情報

株式会社グランクルー 代表取締役 加瀬 健史(カセ タケシ)
不動産業界歴20年以上・宅地建物取引士
不動産のプロでも敬遠しがちな借地権取引の実績100件以上。借地権の売買や更新料の相談・借地トラブルまで幅広く対応し借地取引に多くの知見を持つ。世田谷の借地権に特化したメディア「教えて世田谷不動産」運営。
売却承諾料とは何か?基本的な仕組み
お寺借地の売却を検討する際に必ず出てくるのが「譲渡承諾料(売却承諾料)」です。
まずは、この承諾料がどのような性質を持ち、なぜ支払う必要があるのかを理解しておくことが重要です。
借地権を譲渡する際に地主へ支払う承諾料
借地権は土地を借りている権利であり、所有権とは異なります。
そのため、借地権を第三者に売却する際には、地主(この場合は寺院)の承諾が必要です。承諾料は、その承諾を得るために支払う対価のような位置づけです。
承諾を受けずに譲渡してしまうと、契約違反とみなされ、最悪の場合は借地契約を解除されるリスクもあります。
宗教法人が地主の場合に特徴的な注意点
お寺のような宗教法人が地主の場合、一般の地主と異なる特徴があります。
- 承諾手続きが慎重:責任役員会など内部決議が必要なため、承諾までに時間がかかることがある。
- 承諾料以外の負担:承諾料に加えて寄付金を求められるケースがある。
- 用途や買主の属性への配慮:寺院の方針により、買主が事業用に使うことを認めない場合がある。
このように、金額面だけでなく交渉の進め方や相手方の方針も考慮する必要があります。
名義書換料・寄付金とどう違うのか
承諾料と似た言葉に「名義書換料」があります。これは借地人が変わる際に、地主に対して支払う費用で、実質的には承諾料と同じ意味で使われることが多いです。
ただし寺院によっては「承諾料」と「寄付金」を別に設定する場合もあり、実際の負担は相場より大きくなることがあります。
お寺借地における承諾料の相場
お寺が地主となっている借地を売却する際、承諾料がいくら必要になるのかは多くの人が最も気になる点です。
承諾料は法律で明確に定められているものではなく、あくまで「慣行としての相場」と「寺院ごとの方針」によって決まります。
ここでは一般的な目安や地域差、変動要因を整理します。
借地権価格の5〜10%が一般的
承諾料は通常、借地権価格の5〜10%程度が目安とされています。
例えば更地価格が3,000万円、借地権割合が70%なら借地権価格は2,100万円です。
この場合、承諾料は2,100万円 × 5〜10%=105〜210万円が相場となります。
もちろん個別の条件によって上下することはありますが、このレンジが一つの基準です。
首都圏・地方での金額差
都市部では地価が高いため、同じ割合でも承諾料が高額になりやすい傾向があります。
首都圏や政令指定都市では100万円を超える金額が珍しくなく、一方で地方では数十万円程度に収まることもあります。
つまり「率は同じでも、金額ベースでは地域差が大きい」のが特徴です。
契約残存期間や地代による増減要因
承諾料は単純に借地権価格に比例するわけではなく、契約条件も考慮されます。
たとえば、契約残存期間が短い借地や、地代が相場よりも低く設定されている借地では、寺院が承諾料を高めに設定することがあります。
逆に、地代が高い場合や更新料をしっかり支払っている場合には、承諾料が抑えられるケースもあります。
承諾料の計算方法をわかりやすく解説
お寺借地の売却承諾料は「借地権価格の5〜10%」が目安とされますが、実際に自分の借地でいくらになるのかを知るには計算方法を理解しておく必要があります。
借地権価格の算定式(更地価格×借地権割合)
承諾料を計算するうえで基準となるのが「借地権価格」です。算定式は以下のとおりです。
借地権価格 = 更地価格 × 借地権割合
- 更地価格:その土地を更地として所有権で売買した場合の価格(路線価や不動産会社の査定を参考にする)。
- 借地権割合:国税庁の路線価で定められており、地域ごとに50%〜90%程度で設定されている。
承諾料の計算ステップ(例題付き)
承諾料は借地権価格に5〜10%を掛けて算出します。
例)更地価格3,000万円、借地権割合60%の場合
- 借地権価格:3,000万円 × 60% = 1,800万円
- 承諾料:1,800万円 × 5〜10% = 90〜180万円
このように、土地の評価額や地域の借地権割合を調べることで、ある程度の目安を算出できます。
定期借地・事業用借地の場合の特殊な算定
定期借地や事業用借地では契約満了時に土地を返還することが前提となるため、借地権価格自体が低く評価されます。
そのため、承諾料も相対的に低くなるのが一般的です。ただし、事業用として収益性が高い土地では、寺院側が高めの承諾料を設定するケースもあるため注意が必要です。
承諾料が高額になるケースと交渉ポイント
お寺借地の売却承諾料は、通常は借地権価格の5〜10%が目安とされています。
しかし、条件によっては想定以上に高額な請求を受けることもあります。
そうした場合でも慌てず、冷静に理由を確認し交渉を進めることが大切です。
ここでは承諾料が高額になりやすいケースと、その対処法を解説します。
境内地・墓地隣接など特殊立地のケース
境内や墓地に隣接している借地は、寺院にとって周囲環境や檀家との関係に影響を及ぼすため、承諾を慎重に判断する傾向があります。その結果、承諾料を通常より高めに設定するケースがあります。
売却希望者は「周囲の相場との比較」を提示しながら、過大な金額を抑える交渉を行うことが重要です。
地代が相場より低い場合の調整
長期間にわたり契約が続いている借地では、地代が周辺相場よりも低くなっていることがよくあります。
その場合、寺院は「地代の低さを補う」として承諾料を高めに設定することがあります。
交渉にあたっては、地代水準や過去の更新履歴を確認し、合理的な範囲で承諾料を調整するよう求めることが有効です。
寺院から寄付金を求められたときの対応方法
お寺が地主の場合、承諾料に加えて「寄付金」を求められるケースも見られます。
寄付金は法的に義務ではないため、交渉の余地があります。ただし、寺院との関係を円滑に保ちたい場合には「一部を寄付金として応じる」など柔軟に対応することも現実的です。
重要なのは、寄付金と承諾料を混同せず、金額と性質を明確に分けて取り扱うことです。
承諾料をめぐるトラブル事例と回避策
お寺借地の売却では、承諾料の金額や支払い条件をめぐってトラブルが起きやすいのが実情です。
宗教法人は営利法人とは異なる基準で判断するため、想定外の条件を提示されることもあります。
ここでは代表的なトラブルと、その回避策を紹介します。
過大請求にどう対応するか
寺院から相場を大きく上回る承諾料を請求されるケースがあります。例えば、借地権価格の20%以上を求められるなど、通常水準を超える金額です。
こうした場合は、借地権価格×5〜10%が一般的な相場であることを資料で示すことが有効です。
必要であれば不動産鑑定士に査定を依頼し、客観的な根拠を提示して交渉するのが望ましいでしょう。
承諾を拒否された場合の借地非訟申立
売却を進めたいのに承諾そのものを拒否されるケースもあります。
この場合、借地借家法に基づいて「借地非訟」という裁判所への申し立てを行い、裁判所から承諾に代わる許可を得ることが可能です。
ただし、手続きには時間や費用がかかるため、できる限り交渉での解決を優先し、最終手段として活用するのが現実的です。
書面で合意内容を残す重要性
承諾料の金額や支払い条件を口頭で合意してしまうと、後に「言った・言わない」のトラブルに発展することがあります。承諾料の金額・支払期日・性質(承諾料か寄付金か)を必ず文書で明示することが大切です。
寺院との信頼関係を守るためにも、書面を交わしておくことで後のトラブルを防止できます。
売却承諾料の支払いに関する実務Q&A
お寺借地を売却する際に避けて通れない承諾料。実際の現場では「誰が負担するのか」「いつ払うのか」「税務上の扱いはどうなるのか」といった具体的な疑問が多く寄せられます。ここでは実務で特に重要なポイントをQ&A形式で整理しました。
誰が負担するのか?売主と買主の取り決め
承諾料は本来、借地権を譲渡する側(=売主)が地主から承諾を得るために支払う性質を持っています。ただし実務では、売主と買主の交渉で「折半」や「買主負担」となるケースもあります。特に価格交渉の過程で「承諾料は買主が負担する代わりに売買価格を下げる」といった調整が行われることもあります。最終的には契約書に明記し、トラブルを避けることが大切です。
支払うタイミングはいつか(契約時・決済時)
承諾料は通常、売買契約から決済までの間に支払われます。寺院によっては「承諾書を発行する前に支払う」ことを求める場合もありますが、売主としては承諾書の発行と同時に支払うのが安全です。決済日に売買代金の授受と同時に承諾料を支払い、承諾書を受け取る形にすれば、双方が安心して手続きを進められます。
税務上の取り扱い(譲渡費用に算入できるか)
承諾料は、税務上「譲渡費用」として認められる場合があります。つまり、譲渡所得の計算において売却代金から差し引くことが可能であり、その分課税額を減らせます。ただし、寄付金として扱われる場合は譲渡費用に算入できないこともあるため、性質を明確に区別しておく必要があります。契約書や領収書には「承諾料」と明記してもらうことが重要です。
まとめ|相場と計算方法を押さえて承諾交渉を有利に進めよう
お寺借地を売却する際に必須となる「売却承諾料」は、一般的に借地権価格の5〜10%が目安です。ただし、立地や契約条件、寺院の方針によって変動するため、一律ではなく交渉によって最終的に決まります。
承諾料は地主である寺院の承諾を得るための費用であり、名義書換料や寄付金と混同されやすい点に注意が必要です。特に宗教法人が地主の場合、承諾に時間がかかったり、寄付金を求められるケースもあるため、早めの確認と準備が欠かせません。
計算方法はシンプルで、更地価格に借地権割合を掛けて借地権価格を算出し、その金額に5〜10%を掛けて概算を出せます。あらかじめ自分で計算し相場を把握しておけば、過大請求や不利な条件を回避でき、交渉を有利に進めることができます。
さらに、承諾料の負担者や支払いタイミング、税務上の扱いについても契約書に明記しておくことがトラブル防止につながります。
要するに、「相場を理解する」「計算方法を知る」「交渉は根拠を持って行う」――この3つを意識すれば、お寺借地の売却承諾料も納得感のある条件で合意しやすくなります。安心して売却を進めるために、準備段階から情報を整理し、必要に応じて専門家のサポートを受けることが成功の近道です。
私が責任をもって対応いたします。
私が責任をもって
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加瀬 健史(カセ タケシ)
不動産業界歴20年以上 ・ 宅地建物取引士
不動産のプロでも敬遠しがちな借地権取引の実績100件以上。
借地権の売買や更新料の相談・借地トラブルまで幅広く対応し借地取引に多くの知見を持つ。
- 世田谷の借地権に特化したメディア「教えて世田谷不動産」運営。
- ”借地取引をわかりやすく”をテーマに掲げた「借地権のミカタ」監修。
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