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お寺借地の売却にかかる税金と節税対策を徹底解説

お寺が地主となっている借地を売却する際、多くの人が気になるのが「どれくらい税金がかかるのか」という点です。
売却で得た代金はそのまま手元に残るわけではなく、譲渡所得税や住民税などの税金が課されます。
さらに所有期間が5年を超えているかどうかで税率が大きく変わり、支払う金額が数百万円単位で異なることもあります。
一方で、承諾料や仲介手数料などは譲渡費用として控除でき、3,000万円特別控除や取得費加算の特例を使えば節税も可能です。
本記事では、お寺借地の売却にかかる税金の仕組みと節税の具体策を徹底解説し、安心して手取りを最大化するためのポイントを整理します。
記事監修者情報

株式会社グランクルー 代表取締役 加瀬 健史(カセ タケシ)
不動産業界歴20年以上・宅地建物取引士
不動産のプロでも敬遠しがちな借地権取引の実績100件以上。借地権の売買や更新料の相談・借地トラブルまで幅広く対応し借地取引に多くの知見を持つ。世田谷の借地権に特化したメディア「教えて世田谷不動産」運営。
お寺借地の売却でかかる税金の種類
お寺が地主となっている借地を売却する場合、税金の対象となるのは「借地権を譲渡して得られた利益(譲渡所得)」です。
ただし、実際の取引ではこれ以外にも細かい税金や費用が発生するため、全体像を理解しておくことが大切です。ここでは代表的な税金の種類を整理します。
譲渡所得税と住民税(所得に応じて課税)
借地権を売却したときに最も大きな負担となるのが、譲渡所得税と住民税です。
- 譲渡所得税:売却益に対して国税として課税
- 住民税:売却益に対して地方税として課税
売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いた「譲渡所得」が課税対象となり、所有期間によって税率(長期20%/短期39%)が決まります。
印紙税・登録免許税などの諸税費用
売買契約書を作成する際には、契約金額に応じた収入印紙を貼る必要があり、これが印紙税として課されます。
また、売却に伴って登記手続きを行う場合には登録免許税が発生します。
これらは譲渡所得税や住民税ほど大きな額ではありませんが、数万円単位の負担になることがあります。
承諾料に対する税務上の扱い
寺院に支払う承諾料は「譲渡費用」として譲渡所得の計算上、控除できる扱いになります。
そのため、支払った承諾料の分だけ課税対象額を減らせるため、税金負担を軽減する効果があります。
ただし、寺院から求められる「寄付金」や「協力金」は税務上の譲渡費用には算入できないケースが多いため、領収書や契約書で名目を明確に分けておくことが重要です。
譲渡所得税の計算方法をわかりやすく解説
お寺借地の売却で発生する譲渡所得税は、単純に売却額に課税されるわけではありません。
売却によって得た利益(譲渡所得)を算出し、その金額に税率をかける仕組みです。ここでは基本的な計算式と具体例を紹介します。
譲渡所得=譲渡価格−(取得費+譲渡費用)
譲渡所得の計算は次のように行います。
譲渡所得 = 譲渡価格 −(取得費+譲渡費用)
- 譲渡価格:借地権を売却して得た金額
- 取得費:借地権を取得する際にかかった費用(購入費用や相続時の評価額など)
- 譲渡費用:売却に直接かかった費用(承諾料、仲介手数料、司法書士報酬、印紙税など)
この差額がプラスであれば課税対象となり、マイナスなら課税されません。
取得費が不明な場合の概算取得費ルール
古くから所有していて購入時の資料が残っていない場合は、「概算取得費」というルールが使えます。
これは譲渡価格の5%を取得費とみなす方法です。例えば、譲渡価格が2,000万円なら、取得費は100万円として計算されます。
資料がない場合でも課税額を計算できる仕組みですが、実際の取得費が大きかった場合は税負担が重くなるため注意が必要です。
計算例:借地権2,000万円で売却した場合
仮に借地権を2,000万円で売却し、承諾料150万円・仲介手数料60万円・司法書士報酬10万円を支払ったケースを考えます。
- 譲渡価格:2,000万円
- 取得費:概算取得費(2,000万円 × 5%=100万円)
- 譲渡費用:150万円+60万円+10万円=220万円
譲渡所得=2,000万円 −(100万円+220万円)=1,680万円
この1,680万円に対して税率(長期20%/短期39%)が課されます。所有期間が5年を超えていれば、約336万円の税金が発生するイメージです。
節税対策① 譲渡費用に含められる項目を最大限活用
お寺借地を売却するときに支払う費用の中には、譲渡所得の計算で「譲渡費用」として控除できるものがあります。
これを正しく計上すれば、課税対象となる所得を減らし、税金負担を大きく軽減することが可能です。
承諾料・仲介手数料・司法書士報酬は控除可能
借地を売却する際に寺院へ支払う承諾料、不動産会社への仲介手数料、登記関連を依頼した司法書士への報酬は、すべて譲渡費用に含めることができます。
これらを漏れなく計上することで、譲渡所得を数十万〜数百万円単位で圧縮できるケースもあります。
建物解体費用も条件次第で譲渡費用に算入可能
借地上に建物がある場合、買主の要望や契約条件によっては解体して更地で引き渡すことがあります。
このときの解体費用も「売却のために直接必要となった支出」として譲渡費用に含められる可能性があります。
解体費を負担した場合は領収書を必ず保管しておきましょう。
その他の費用も確認する
売却に伴って発生する印紙税、測量費、境界確定のための費用も譲渡費用として認められるケースがあります。
逆に、寺院から求められる「寄付金」や「協力金」は譲渡費用に算入できないことが多いため、名目を明確に区分しておくことが大切です。
節税対策② 特例制度を活用する
お寺借地の売却で発生する譲渡所得税は大きな負担になりがちですが、国の税制にはさまざまな「特例制度」が用意されています。条件を満たせば課税額を大幅に減らせるため、売却前に必ず確認しておくべきポイントです。
3,000万円特別控除(居住用財産を売却した場合)
自分や家族が実際に住んでいた借地上の建物を売却する場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度があります。
たとえば譲渡所得が2,500万円なら課税所得はゼロとなり、税金がかからなくなります。
ただし、セカンドハウスや賃貸に出していた物件は対象外となるため注意が必要です。
相続財産を売却する場合の取得費加算の特例
親や祖父母から相続した借地を売却する場合、相続税を納めていればその税額を「取得費」に加算できます。
これにより譲渡所得を小さくでき、課税額を減らす効果があります。
相続税を既に支払ったケースでは、この特例を適用しないと二重に課税されるような不利な結果になりかねないため、必ず確認しましょう。
長期譲渡と短期譲渡の区分を意識する
借地権の所有期間が5年を超えていれば「長期譲渡」となり、税率は約20%に抑えられます。
一方、5年以下だと「短期譲渡」で約39%とほぼ倍の税率になります。
売却を急がず所有期間5年を過ぎてから手続きを進めるだけで、数百万円単位の節税につながるケースもあります。
節税対策③ 相続や贈与を踏まえた計画的な売却
お寺借地の売却にかかる税金は、売却する「タイミング」や「権利の承継方法」によって大きく変わります。
相続や贈与を見据えて計画的に進めることで、余分な税負担を避けられるケースがあります。
相続発生前後のタイミングで税負担が変わる
親から借地権を相続する場合、相続が発生すると権利は相続財産として評価されます。
その後すぐに売却すると、取得費が相続税評価額に基づくため、譲渡所得が大きくならず税金が軽減されることがあります。
逆に、相続税を支払わずに放置すると、売却時の課税負担が大きくなる可能性があるため注意が必要です。
贈与よりも売却の方が有利になるケースもある
親が生前に子へ借地権を贈与すると、高額な贈与税が発生する可能性があります。
贈与税は税率が高いため、無理に贈与するよりも、親が売却して現金化し、その資金を相続財産として残す方が有利な場合もあります。
相続税の基礎控除や特例を活用できれば、結果的に節税につながります。
長期保有で節税効果を高める
借地権の所有期間が5年を超えると長期譲渡となり、税率は約20%に下がります。
相続や贈与を急ぐよりも、長期保有に切り替えることで節税効果が得られるケースもあるため、売却を焦らずタイミングを見極めることが重要です。
税務調査でトラブルを避けるポイント
お寺借地の売却では、承諾料や寄付金、解体費用など特殊な支出が絡むため、税務上の取り扱いが複雑になりやすいです。
申告内容に不備があると、税務調査で指摘を受け余計な税負担や追徴課税につながる恐れがあります。
ここではトラブルを防ぐための実務上の注意点を解説します。
領収書・契約書は必ず保管する
譲渡費用として計上できる承諾料や仲介手数料、司法書士報酬などは、支払った事実を証明できる書類が必須です。
領収書や契約書を紛失してしまうと、税務署に認められず控除が受けられないことがあります。
特に承諾料は「承諾料」と明記された領収書を寺院から受け取り、寄付金と混同されないようにしておくことが重要です。
寄付金や協力金は「譲渡費用」に算入できない可能性あり
寺院によっては承諾料のほかに「寄付金」「協力金」を求められることがあります。
これらは宗教法人への寄付扱いとなり、譲渡費用として認められないケースが大半です。
申告時に無理に譲渡費用として計上すると、税務調査で否認されるリスクが高まります。支払いの性質を明確に区分して整理しましょう。
専門家にシミュレーションを依頼するメリット
譲渡所得の計算や特例の適用は複雑で、素人判断では見落としが生じやすい部分です。
税理士に相談して事前にシミュレーションしておけば、申告ミスを防げるだけでなく、利用できる控除や特例を最大限活用できます。特に相続や居住用財産の特例が絡むケースでは、専門家のアドバイスが節税に直結します。
まとめ|税金の仕組みと節税策を押さえて有利に借地売却を進めよう
お寺借地を売却する際に大きな負担となるのは、譲渡所得税と住民税です。
所有期間が5年を超えるかどうかで税率が約20%か約39%に分かれるため、売却時期の見極めが重要なポイントになります。
また、承諾料や仲介手数料、司法書士報酬、建物解体費用などは譲渡費用として控除できるため、これらを漏れなく計上することが節税につながります。
さらに、3,000万円特別控除や取得費加算の特例、長期譲渡の扱いなどを活用すれば、課税額を大幅に抑えることも可能です。相続や贈与のタイミングを踏まえた計画的な売却も有効な節税策の一つといえます。
一方で、寄付金や協力金は譲渡費用に算入できないケースが多く、税務調査で否認されるリスクもあるため注意が必要です。領収書や契約書を必ず保管し、税理士など専門家に事前相談してシミュレーションを行うことが安心につながります。
つまり、「税金の仕組みを理解し、正しく費用を計上し、特例を活用する」ことが、借地売却で手取りを最大化する鍵です。しっかりと準備を整え、税負担を最小限に抑えながら有利に借地売却を進めましょう。
私が責任をもって対応いたします。
私が責任をもって
対応いたします。
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加瀬 健史(カセ タケシ)
不動産業界歴20年以上 ・ 宅地建物取引士
不動産のプロでも敬遠しがちな借地権取引の実績100件以上。
借地権の売買や更新料の相談・借地トラブルまで幅広く対応し借地取引に多くの知見を持つ。
- 世田谷の借地権に特化したメディア「教えて世田谷不動産」運営。
- ”借地取引をわかりやすく”をテーマに掲げた「借地権のミカタ」監修。
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