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お寺借地の売却でよくあるトラブルTOP5と解決策

お寺の借地を売却する際には、通常の不動産取引にはない独特のトラブルがつきまといます。

承諾料が相場以上に請求されたり、古い契約書の不備で交渉がこじれたり、相続人同士の意見が割れて話し合いが進まないといったケースは珍しくありません。

さらに、用途制限や承諾の遅延、税金や諸費用の見落としによって、売却計画そのものが崩れてしまうリスクもあります。

本記事では、お寺借地の売却で起きやすいトラブルTOP5を取り上げ、それぞれの原因と実践的な解決策をわかりやすく解説します。

記事監修者情報

株式会社グランクルー 代表取締役 加瀬 健史カセ タケシ)
不動産業界歴20年以上・宅地建物取引士

不動産のプロでも敬遠しがちな借地権取引の実績100件以上。借地権の売買や更新料の相談・借地トラブルまで幅広く対応し借地取引に多くの知見を持つ。世田谷の借地権に特化したメディア「教えて世田谷不動産」運営。

結論|お寺借地の売却は承諾料・契約条件・相続でトラブルが多発する

お寺が地主となっている借地は、一般的な土地取引よりも特殊な要素が多く、売却時にトラブルが起きやすいのが現実です。

特に承諾料や契約条件、相続に絡む問題は頻発し、手続きが遅れたり余計な費用が発生する原因となります。

ここでは、代表的なトラブルの切り口を整理しておきましょう。

  • 相場以上の承諾料請求
  • 契約書の不備や古さ
  • 相続人間の意見対立
  • 用途制限や承諾遅延
  • 税金や費用の見落とし

トラブル1|承諾料が相場以上に高額請求される

お寺の借地を売却する際に最も多いトラブルのひとつが、承諾料の高額請求です。

承諾料とは、地主である寺院に対して「借地権を第三者に譲渡してよいか」を承諾してもらうために支払う費用のことです。

相場は借地権価格の5〜10%

一般的に承諾料の相場は借地権価格の5〜10%とされています。例えば、借地権価格が2,000万円なら承諾料は100〜200万円程度が目安です。

しかし、寺院によっては「檀家への配慮」や「寺院の方針」を理由に、相場を大きく超える金額を請求するケースもあります。

中には数百万円から1,000万円近くを求められる例もあり、売却計画に大きな支障をきたします。

解決策:高額請求に対抗する方法(根拠提示・交渉・借地非訟)

承諾料が相場以上だと感じた場合は、まず「借地権価格の算定根拠」を提示し、相場水準を説明することが有効です。

不動産鑑定士による評価や、同地域の取引事例を示せば、交渉を有利に進められます。

それでも寺院が譲らない場合には、弁護士を通じて交渉するのが安心です。

さらに、承諾が得られない場合には「借地非訟」という裁判所の手続きを利用できます。

これは、地主の承諾に代わって裁判所が承諾に相当する効果を認める制度で、高額請求から借地人を守るための手段となります。

トラブル2|契約書が古く内容が不明確

お寺の借地は数十年前から続いているケースが多く、契約書が古く内容が不明確なまま相続や売却を迎えることが少なくありません。

これが売却手続きの大きな障害となり、寺院との交渉が難航する原因にもなります。

更新料・承諾料の規定が曖昧

古い契約書では「更新料」や「譲渡時の承諾料」について明記されていない場合がよくあります。

その結果、寺院側と借地人側で解釈が食い違い、「支払うべきかどうか」「金額はどの程度か」をめぐってトラブルが発生します。曖昧な条項や慣習的なやりとりが残っている場合ほど、話がこじれやすいのです。

解決策は契約内容の確認と専門家による整理

まずは借地契約書を入手し、更新期限や承諾に関する記載を確認することが第一歩です。

もし契約書自体が見当たらない場合は、寺院に確認して写しをもらうか、過去のやり取りを整理しておく必要があります。

さらに、不明確な条項については弁護士や司法書士に相談し、法的にどう解釈できるかを整理してもらうことが重要です。

特に売却を進める場合には、契約内容を事前に整理しておくことで、買主に安心感を与えられます。

逆に契約が不明確なままでは買主がリスクを感じて購入をためらう可能性があるため、結果的に売却価格の低下にもつながります。

トラブル3|相続人同士で売却か維持か意見が割れる

お寺の借地を相続した際に最も多いトラブルの一つが、相続人同士で意見が分かれるケースです。借地は不動産としての価値がある一方で、地代や承諾料などの負担も伴うため、相続人ごとに考え方が大きく異なることが原因です。

遺産分割協議で揉める典型パターン

典型的なのは「売却して現金化したい相続人」と「住み続けたい相続人」の意見が対立するケースです。

現金化を望む側は「不公平感をなくしたい」「資産を平等に分けたい」と考えますが、住み続けたい側は「生活の基盤を守りたい」と主張します。

この利害の衝突が遺産分割協議を長引かせ、最悪の場合、裁判に発展することもあります。

解決策は事前の合意形成と第三者の介入

相続トラブルを防ぐには、まず生前の段階で親と相続人が話し合い、借地をどう扱うかを合意しておくことが理想です。遺言書やエンディングノートに明記しておけば、争いを大幅に減らせます。

既に相続が発生している場合は、感情的な議論を避けるために第三者の介入が有効です。

弁護士や調停委員を通じて協議を進めれば、公平な基準で合意形成ができ、遺産分割をスムーズに進められる可能性が高まります。

トラブル4|用途制限や承諾遅延で売却が進まない

お寺の借地を売却する際には、地主である寺院の承諾が不可欠です。

しかし、用途制限や承諾の遅延が原因で、売却手続きがスムーズに進まないケースが少なくありません。これは寺院特有の事情が絡みやすく、借地売却を難しくする要因のひとつです。

新住職や役員会の意向で制限が強まることも

寺院は宗教法人であるため、承諾の判断が住職や役員会の意向に左右されます。

新住職が就任したり役員構成が変わった場合、「商業利用は不可」「住宅用のみ承諾」といった厳しい用途制限が課されることがあります。結果として、買主の候補が限られ、売却自体が難航するリスクがあります。

解決策は事前承諾の確保と書面化

売却を検討している場合は、早めに寺院に相談し、承諾を得ておくことが重要です。

承諾条件を明確にし、合意した内容は必ず書面で残すことで、住職交代や体制変更による条件の変更を防げます。

また、不動産会社を通じて相場に基づいた承諾料を提示すれば、交渉を有利に進めやすくなります。

トラブル5|税金や諸費用を把握せず手取りが減る

お寺の借地を売却する際に意外と多いのが、税金や諸費用を正しく把握していなかったために「思ったより手元に残らなかった」というトラブルです。

承諾料や仲介手数料のような目に見える費用だけでなく、税務上の負担も含めて計算しておかないと、最終的な手取り額が大幅に減ってしまいます。

譲渡所得税・住民税・仲介手数料など

借地権を売却すると、譲渡所得税と住民税が課税されます。所有期間が5年超であれば約20%、5年以下なら約39%が課税されるため、数百万円単位の負担になることも珍しくありません。

さらに、不動産会社への仲介手数料(売却価格の3%+6万円)、司法書士報酬、売買契約書に貼る印紙税なども発生します。これらを合算すると、売却代金の1割以上が費用で消えることもあります。

解決策:節税策(譲渡費用控除・特例活用)で負担を軽減

承諾料や仲介手数料、建物解体費用などは「譲渡費用」として譲渡所得から控除できます。また、居住用財産であれば3,000万円特別控除、相続で取得した場合には取得費加算の特例を利用できる可能性があります。これらを適切に活用すれば、課税額を大幅に減らすことができ、手取りを確保しやすくなります。

お寺の借売却トラブルを未然に防ぐための共通ポイント

お寺借地の売却は、承諾料・契約条件・相続・用途制限・税金といった複数の要因が絡むため、トラブルの温床になりやすいのが特徴です。

しかし、共通する予防策を意識しておけば、リスクを大幅に減らすことができます。ここでは代表的な回避ポイントをまとめます。

契約書と登記を早めに整理

売却を検討する前に、借地契約書と登記簿の内容を必ず確認しましょう。更新料や承諾料の規定、建物の登記状況を明確にしておけば、後の交渉で揉めにくくなります。古い契約書の場合は、専門家に解釈を依頼して整理しておくことが重要です。

相場や法律に基づいた知識を持つ

承諾料の相場は借地権価格の5〜10%とされています。この基準や借地借家法の内容を理解しておけば、寺院から相場を超える請求を受けた際にも冷静に対処できます。不動産鑑定や判例を参考に、知識武装しておくことがトラブル防止につながります。

専門家(弁護士・司法書士・税理士・不動産会社)の活用

弁護士は高額請求や承諾拒否への交渉をサポートし、司法書士は登記や権利整理を担当できます。

税理士は譲渡所得税や相続税の試算を行い、不動産会社は売却の実務を進めてくれます。それぞれの専門家を適切に組み合わせることで、リスクを最小限に抑えながら安全に売却を進められます。承諾料や仲介手数料、建物解体費用などは「譲渡費用」として譲渡所得から控除できます。

また、居住用財産であれば3,000万円特別控除、相続で取得した場合には取得費加算の特例を利用できる可能性があります。

これらを適切に活用すれば、課税額を大幅に減らすことができ、手取りを確保しやすくなります。

加瀬 健史

当社では寺院の借地売却の実績が豊富にあり、弁護士との士業連携もしっかりしておりますので、お悩みのことがありましたら気軽にご相談ください。ワンストップで対応いたします!(相談はこちらから

まとめ|トラブルは事前準備と知識・専門家活用で回避できる

お寺借地の売却は、承諾料の高額請求や古い契約書の不備、相続人間の意見対立、用途制限や承諾遅延、税金・費用の見落としといった複数のリスクを伴います。

これらは放置すると手続きが進まなくなったり、思わぬ出費を強いられる原因となります。

しかし、契約書や登記を事前に整理し、承諾料や税金の相場を把握しておけば、トラブルの多くは未然に防ぐことが可能です。

さらに、弁護士・司法書士・税理士・不動産会社といった専門家を適切に活用することで、交渉の難航や税務申告の不備といったリスクも軽減できます。

要するに、借地売却で大切なのは「準備」「知識」「専門家の力」という3つの要素です。これらをしっかり押さえて行動すれば、安心してスムーズに取引を進めることができるでしょう。

私が責任をもって対応いたします。

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加瀬 健史カセ タケシ)
不動産業界歴20年以上 宅地建物取引士

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  • 世田谷の借地権に特化したメディア「教えて世田谷不動産」運営。
  • ”借地取引をわかりやすく”をテーマに掲げた「借地権のミカタ」監修。

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